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地主はアパート建築するべき?メリットとその注意点を相続専門の税理士と不動産鑑定士が解説します【地主の資産の守り方】
コラム
執筆者 中瀬 桃太郎 (なかせ ももたろう)
- 株式会社桃太郎オフィス 代表
- 一般社団法人桃太郎オフィス 共同代表
- 不動産鑑定士 宅地建物取引士
YouTubeチャンネル登録者数計100万人の不動産鑑定士。不動産売買、不動産相続に関する事業を展開。相談件数は1000件突破。
Amazonベストセラー「悪魔の不動産鑑定」著者
執筆者 泰道 征憲 (たいどう まさのり)
- 一般社団法人桃太郎オフィス 共同代表
- 不動産鑑定士 土地家屋調査士 宅地建物取引士
資産家・地主様の気持ちになって相談対応できる不動産鑑定士。地主の家系で生まれ、自身で経験した相続税対策、不動産運用の知識をお客様に提案しています。不動産業界歴15年以上。
Amazonベストセラー「悪魔の不動産鑑定」著者
目次
地主の方が相続対策を考えるとき、よく選択肢に挙がるのがアパート建築です。
アパートを建てることで相続税評価額を圧縮でき、大きな節税効果が期待できるケースがあります。
一方で、相続税が下がるからといって、どんな土地にもアパートを建てればよいわけではありません。
そこで今回は、相続税専門の税理士法人リリーフの税理士、髙橋達徳(たかはし たつのり)先生にお話を伺いながら、アパート建築による相続対策の仕組みと、建築前に確認しておきたい注意点を整理します。
アパート建築は「評価引き下げ対策」のひとつ

相続対策には、大きく分けて、
・評価引き下げ対策
・財産の移転対策
・納税資金の確保対策
・遺産分割対策
という4つの考え方があります。
アパート建築は、この中でも「評価引き下げ対策」にあたり、相続税の課税対象となる財産の評価額を下げる方法のひとつです。
相続税対策としての効果は比較的大きく、地主の方にとって代表的な方法といえます。
アパート建築で相続税評価額が下がる仕組み

たとえば、建物4,000万円、土地6,000万円、合計1億円の不動産を考えてみます。
建物は建築費より低く評価される
4,000万円をかけて建築した建物が、そのまま4,000万円として相続税評価されるわけではありません。
まず固定資産税評価額をもとに評価され、さらにアパートとして第三者へ貸している場合には、一定の評価減が適用されます。
一例では、
4,000万円
↓
固定資産税評価額 約2,800万円
↓
貸家としての評価 約1,960万円
というように、建築費よりも相続税評価額が大きく下がることがあります。
土地も貸していることで評価額が下がる
土地についても、購入価格や市場価格がそのまま相続税評価額になるわけではありません。
路線価などをもとに評価したうえで、アパートの敷地として貸している場合には「貸家建付地」として一定の評価減を受けられるケースがあります。
1億円を現金で保有している場合と、不動産として保有している場合では、相続税評価額に大きな差が生まれる可能性があります。
アパート建築で相続税が半分以下になるケースも

仮に5億円の資産を持ち、子ども2人が相続するとします。
何も対策をしなければ相続税が約1億5,000万円になるケースでも、4億円をかけてアパートを建築し、その相続税評価額が2億円程度まで下がれば、
5億円の既存資産
+ アパートの評価額2億円
- 借入金4億円
= 課税対象となる財産 約3億円
となり、相続税が約7,000万円程度まで下がる試算になります。
条件によっては、アパート建築によって相続税額を大幅に圧縮できるということです。
借入れをしないと相続税対策にならない?

アパート建築について、
「銀行から借金をしないと相続税対策にならない」
と思っている方もいます。
しかし、相続税評価額が下がる主な理由は、現金を不動産へ組み替えることにあります。
そのため、手元の現金でアパートを建てた場合でも、借入れをして建てた場合でも、基本的な評価減の効果自体は変わりません。
借入れをするかは別の視点で考える
借入れをすれば手元に現金を残せるため、
・将来の相続税の納税資金にする
・別の不動産投資に使う
・急な支出に備える
といった選択肢を残せます。
一方で、銀行へ支払う利息は負担になります。そのため、
「相続税を下げるために借りる」
のではなく、
「手元資金を残しておく必要があるか」
という視点で借入れの必要性を判断することが重要です。
相続税が下がっても、アパート経営で損をしては意味がない

アパート建築で特に注意したいのが、相続税対策として効果があることと、不動産投資として成功することは別という点です。
たとえば、周辺に田畑が多く賃貸需要が弱い土地へアパートを建てても、入居者が集まらず、十分な家賃収入を得られない可能性があります。また、相続税を1,000万円減らせたとしても、相場より5,000万円高い物件を購入してしまえば、資産全体では大きく損をしています。アパート建築を検討するときは、
「相続税がいくら減るか」
だけでなく、
「そもそもこの土地でアパート経営が成立するのか」
を先に確認する必要があります。
減価償却が終わった後の収支にも注意する
アパート経営では、建築直後の収支だけでなく、中長期的なキャッシュフローも確認する必要があります。
特に木造アパートの場合、税務上の法定耐用年数は22年です。
減価償却期間中は経費として計上できる金額が大きいため、所得税などを抑えやすくなります。
一方、減価償却が終わると、家賃収入やローン返済額は大きく変わらないのに、経費として計上できる減価償却費だけがなくなるという状態になることがあります。
その結果、帳簿上の利益が増え、税負担が急に大きくなる可能性があります。
アパートを建てる際には、表面利回りだけではなく、減価償却終了後まで含めた収支を確認しておくことが重要です。
相続税の節税効果はずっと続くわけではない
アパート建築による評価減は、建築直後に大きな効果が出やすくなります。
しかし、その後アパートを運営すると家賃収入が蓄積され、現金という相続財産が増えていきます。
そのため、時間が経つにつれて、アパートを建てたことによる相続税の減少効果が薄れていく場合があります。
たとえば50代でアパートを建て、実際に相続が発生するのが80代や90代になった場合、建築直後ほどの節税効果が残っていない可能性もあります。
現在の相続税だけを見るのではなく、
「10年後ならどうなるか」
「20年後ならどうなるか」
まで試算して判断することが大切です。
2027年から貸付用不動産の評価方法が見直される
令和8年度税制改正により、2027年1月1日以後の相続等では、課税時期前5年以内に取得または新築した一定の貸付用不動産について、相続税評価の方法が見直されます。
原則として、課税時期における通常の取引価額に相当する金額で評価され、一定の場合には、取得価額を基礎に地価変動などを考慮した価額の80%相当額で評価することができます。
そのため、相続直前にアパートを取得・建築しても、従来と同じような大幅な評価減を受けられない場合があります。
相続対策としてアパート建築を検討する際は、現在の節税効果だけでなく、建築時期や相続までの期間も含めて計画することが重要です。
建築費をかけすぎないことも重要

アパート建築では、どのハウスメーカー・建築会社へ依頼するかによって建築費や設備のグレードが大きく変わります。
設備が充実した高級なアパートは魅力的に見えますが、賃貸需要に合っていなければ建築費を回収できません。
たとえば、周辺の2LDKが月4万円程度で貸し出されている地域で、高額な床暖房や過剰な設備を付けても、それに見合う家賃を取れるとは限りません。
重要なのは、
入居者が求める設備
周辺の家賃相場
建築費
期待できる収益
のバランスです。
自分が住みたい建物ではなく、入居者が求める適切なグレードの建物を考える必要があります。
木造か鉄骨かは「安さ」だけで決めない
建物構造についても、単純に建築費だけで判断するのは避けたいところです。
木造は比較的建築費を抑えやすい一方、減価償却期間が短いため、初期に大きな減価償却費を計上することになります。
しかし、その期間に赤字が発生しても、十分に活用できなければ税務上のメリットを生かしきれないことがあります。
一方、法人で利益が大きく出ている場合など、早い段階で減価償却費を計上できる木造が適しているケースもあります。
木造と鉄骨のどちらが適しているかは、
・所有者が個人か法人か
・現在どの程度所得があるか
・借入期間
・将来の収支
・減価償却をどのように活用するか
などによって変わります。
建築費だけではなく、税務と不動産経営の両面から判断する必要があります。
まとめ:アパート建築は相続税だけで判断しない

アパート建築は、相続税評価額を引き下げるうえで効果の大きい方法のひとつです。
一方で、建てれば必ず得をするわけではありません。
建築を検討する際には、
① アパート建築によって相続税がどれくらい減るのか
② その土地でアパート経営が成立するのか
③ 減価償却終了後まで含めて収支が成り立つのか
④ 相続が発生する時点でも節税効果が見込めるのか
⑤ 建築会社や設備のグレードが適切か
まで確認することが重要です。
さらに、2027年からは相続直前に取得・新築した一定の貸付用不動産について評価方法が変わるため、「相続が近くなってからアパートを建てればよい」という考え方にも注意が必要です。
相続税を減らすために建てたアパートが、結果的に大切な資産を減らす原因になってしまっては本末転倒です。
相続対策と不動産投資、両方の視点から判断しましょう。
動画で詳しく解説しています
動画では、アパート建築によって相続税評価額が下がる仕組みや、具体的な節税額のシミュレーション、建築時に注意したいポイントについて、相続税専門の税理士と不動産鑑定士が詳しく解説しています。
相続対策としてアパート建築を検討している方や、現在ハウスメーカーから建築を提案されている方は、ぜひあわせてご覧ください。
動画で詳しい解説を見る▼
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