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身近に潜む事故物件。告知義務や価値下落率について不動産鑑定士が解説します
コラム
執筆者 中瀬 桃太郎 (なかせ ももたろう)
- 一般社団法人桃太郎オフィス 共同代表
- 不動産鑑定士 宅地建物取引士
YouTubeチャンネル登録者数計100万人の不動産鑑定士。不動産売買、不動産相続に関する事業を展開。相談件数は1000件突破。
Amazonベストセラー「悪魔の不動産鑑定」著者
執筆者 泰道 征憲 (たいどう まさのり)
- 一般社団法人桃太郎オフィス 共同代表
- 不動産鑑定士 土地家屋調査士 宅地建物取引士
資産家・地主様の気持ちになって相談対応できる不動産鑑定士。地主の家系で生まれ、自身で経験した相続税対策、不動産運用の知識をお客様に提案しています。不動産業界歴15年以上。
Amazonベストセラー「悪魔の不動産鑑定」著者
目次
「事故物件」と聞くと、自殺や事件が起きた特殊な物件をイメージする方も多いかもしれません。しかし、実家での孤独死など、相続や不動産経営をしている方にとって意外と身近に起こる可能性があります。
また、人が亡くなった物件だからといって、すべて告知義務が発生するわけではありません。亡くなった状況や場所などによって判断が異なります。
この記事では、事故物件の告知義務が発生するケース・しないケースと、不動産価格や賃料がどの程度下落する可能性があるのかを、不動産鑑定士の視点から解説します。
事故物件の「告知義務」とは

不動産の売買契約や賃貸借契約を結ぶ際、その物件に契約判断へ影響するような問題がある場合、買主や借主へその事実を伝える必要があります。これを「告知義務」といいます。
たとえば、過去に室内で自殺があった物件の場合、
「絶対に住みたくない」
という方もいれば、
「家賃が安ければ気にしない」
という方もいます。
このように、人によって契約するかどうかの判断に大きな影響を与える事実については、原則として告知が必要になります。
事故物件でも告知義務がない3つのケース
2021年10月、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました。
このガイドラインでは、人の死が発生した不動産について、どのような場合に告知が必要になるのか判断基準が示されています。
✅自然死
老衰や病気などによる自然死については、原則として告知義務はありません。
自宅における死亡の中でも、老衰や病死は一般的に起こり得るものであることから、通常は心理的瑕疵にはあたらないと考えられています。
✅日常生活で起きた不慮の事故死
階段からの転落や、食事中の誤嚥など、日常生活の中で発生した不慮の事故による死亡についても、原則として告知義務はありません。
✅隣接住戸や通常使用しない共用部分での死亡
死亡事故が隣の住戸で発生した場合や、入居者が通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した場合も、原則として告知義務はありません。
一方で、ベランダ、エレベーター、共用廊下など、日常的に使用する場所で死亡事故が発生した場合には、告知が必要になるケースがあります。
なお、「一度誰かが入居すれば事故物件の告知義務がなくなる」という考え方は正しくありません。
一度別の人が入居したという理由だけで、告知義務がなくなるわけではありません。
告知義務が発生する4つのケース

自殺・他殺などがあった場合
自殺や他殺などが発生した物件については、原則として告知が必要になります。
また、火災などについても契約判断へ大きな影響を与える事案の場合、告知が必要となる可能性があります。
特殊清掃や大規模リフォームが必要になった場合
自然死であれば原則として告知義務はありません。しかし、
発見が遅れ、特殊清掃や大規模なリフォームが必要になった場合には、自然死であっても告知義務が発生することがあります。
代表的なのが孤独死です。
亡くなってから長期間発見されなかった場合、床などに体液が染み込んだり、臭いが残ったりするため、特殊清掃や大規模な修繕が必要になるケースがあります。
この場合は、単なる自然死とは扱いが異なります。
買主・借主から質問された場合
買主や借主から「過去にこの物件で人が亡くなっていますか?」などと質問された場合は、告知義務がない自然死などであっても、事実を伝える必要があります。
社会的影響が大きい事件などがあった場合
ニュースなどで大きく報道された事件など、買主や借主が把握しておくべき特段の事情がある場合にも告知が必要です。
たとえば、社会的に大きく報道された殺人事件などの場合、建物を解体して新しく建て替えたとしても、過去にその土地で事件があったことを告知しなければならない場合があります。
賃貸の場合は「おおむね3年」がひとつの目安
賃貸物件の場合、告知が必要となる事案が発生してから、おおむね3年間がひとつの目安となります。
ただし、事件性・周知性・社会的影響が大きい事案については、3年以上経過していても告知が必要になる可能性があります。
そのため、3年経過すれば必ず告知義務がなくなるわけではありません。
一方、売買については、賃貸のような「3年」という明確な目安はありません。
物件の売却を検討する場合には、事案の内容を踏まえて慎重に判断する必要があります。
事故物件になると価格はどのくらい下がる?
結論からいうと、事故物件の価格や賃料がどの程度下がるかは、物件によって大きく異なります。
事故の内容だけでなく、
- 物件のエリア
- 事件性の高さ
- 世間への周知度
- 不動産需要
などによっても変わるため、
「事故物件なら必ず○%下がる」と一律に判断することはできません。
特に都心や地方都市の人気エリアなど、不動産需要の高い地域では、比較的価格への影響が小さくなる傾向があります。
ここから紹介する数字は、不動産鑑定士としての査定経験や業者へのヒアリングなどをもとにした、あくまで目安です。
ケース別に見る事故物件の価値下落率の目安

自然死など:0〜5%未満
誰かに看取られた自然死など、そもそも告知義務がないケースでは、不動産価格や賃料への影響は比較的小さい傾向があります。
目安としては、0〜5%未満程度と考えられます。
特殊清掃が必要な孤独死など:10〜30%程度
亡くなってから一定期間発見されず、特殊清掃が必要となったケースでは、10〜30%程度の価格下落がひとつの目安となります。
実際に、相場家賃が6万円程度の部屋について、孤独死による特殊清掃後に5万5,000円へ賃料を下げて入居者を募集したケースも紹介されています。
ただし、エリアや物件の状態などによって影響は異なります。
事件性の高い事案:相場の半値程度になる場合も
連続殺人事件など、事件性が高くニュースで大きく報道されたような事案では、価格への影響が非常に大きくなる可能性があります。
一般的な方法では買主を見つけることが難しく、いわゆる「訳あり不動産」を専門とする買取業者へ売却するケースもあります。
状況によっては、相場価格の半値程度まで下落することも想定する必要があります。
ただし、これらの数字はすべて目安です。
実際の査定では、周辺エリアの取引事例や地場の不動産会社へのヒアリングなどを行い、物件ごとに個別に判断します。
まとめ:事故物件は「何が起きたか」で判断が大きく変わる
人が亡くなった不動産だからといって、すべてが同じ「事故物件」として扱われるわけではありません。
自然死や日常生活での不慮の事故であれば、原則として告知義務がないケースがあります。
一方で、特殊清掃が必要になった孤独死や、自殺・他殺、社会的影響の大きな事件などでは告知が必要になる可能性があり、不動産価格や賃料にも影響が出ます。
特に相続した実家や収益物件で人が亡くなった場合は、「事故物件だから○%下がる」と一律に判断せず、事案の内容、エリア、周辺相場などを踏まえて個別に判断することが重要です。
動画で詳しく解説しています
動画では、事故物件の告知義務があるケース・ないケースを整理した表や、事故の内容ごとの価値下落率の目安を見ながら、不動産鑑定士が詳しく解説しています。
桃太郎オフィスでは、不動産相続や不動産売買に関する相談を受け付けています。
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