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相続対策でよくある失敗7選|土地や不動産を引き継ぐ前に知っておきたい話
コラム

執筆者 泰道 征憲 (たいどう まさのり)
- 一般社団法人桃太郎オフィス 共同代表
- 不動産鑑定士 土地家屋調査士 宅地建物取引士
資産家・地主様の気持ちになって相談対応できる不動産鑑定士。地主の家系で生まれ、自身で経験した相続税対策、不動産運用の知識をお客様に提案しています。不動産業界歴15年以上。
Amazonベストセラー「悪魔の不動産鑑定」著者

執筆者 中瀬 桃太郎 (なかせ ももたろう)
- 一般社団法人桃太郎オフィス 共同代表
- 不動産鑑定士 宅地建物取引士
YouTubeチャンネル登録者数70万人の不動産鑑定士。不動産売買、不動産相続に関する事業を展開。相談件数は1000件突破。
Amazonベストセラー「悪魔の不動産鑑定」著者
目次
「うちの親、土地持ってるけど…相続ってどうすればいいんだろう?」
そんな風にモヤモヤしている方、実はとても多いのです。
相続は“なんとなく”で進めてしまうと、あとで「こんなはずじゃなかった…」と後悔してしまうこともあります。
この記事では、実際にあった「相続対策の失敗事例」を7つ紹介しながら、なぜそれが問題だったのか・どうすればよかったのかを、専門用語をかみ砕いてわかりやすく解説していきます。
失敗1:生命保険の受取人を妻にしてしまった
よくあるパターン
「相続税を減らすために保険をかけました。受取人は妻にしています!」
実はこれ、よくある“もったいない”失敗です。
なぜダメなのか?
生命保険には、「法定相続人の人数 × 500万円」まで相続税がかからない特例(非課税枠)があります。たとえば、相続人が妻と子ども2人の合計3人であれば、1,500万円までは非課税になります。
ただし、この非課税枠は受取人ごとに按分されるため、受取人が配偶者(妻)の場合、そもそも配偶者は「配偶者の税額軽減」という別の優遇制度により、最大1億6,000万円または法定相続分までは相続税がかかりません。つまり、非課税枠と重なってしまい、非課税の恩恵を十分に活かせないのです。
正しくはこうすれば節税できる
生命保険の受取人を「子ども」にしておくと、非課税枠を無駄なく使えます。たとえば、保険金1,500万円を子ども2人が750万円ずつ受け取るように設定すれば、2人合わせて非課税枠の1,500万円をぴったり使い切ることができ、税金がかからなくなります。
受取人の変更は、保険会社への書類1枚で完了することが多いため、節税効果を得るために非常に効果的な対策です。
失敗2:遺産を全部、妻に渡してしまった
一見よさそうに見えるが…
配偶者は、相続税が非常に優遇されており、「配偶者の税額軽減」により、法定相続分または1億6,000万円までは非課税になります。そのため、生前に「全部妻に渡しておけば安心」と考える方も多いです。
最終的な税金が増えるケースも
しかし、問題はその後です。奥様が亡くなった際、再び相続が発生します(これを「二次相続」と言います)。その際には、子どもたちが全ての財産を相続することになりますが、配偶者の税額軽減はもう使えません。
例えば、4億円の財産を全て妻に相続させた場合、一次相続では約4,600万円の税金で済みますが、妻が亡くなったときには約6,900万円の相続税が発生し、合計で1億1,500万円にもなってしまいます。
一方で、最初の相続で妻に1割、残りを子どもたちに分けていれば、一次相続と二次相続を合わせた合計が9,800万円程度に抑えられるケースもあります。これは、各相続で税金のかかり方が変わるため、全体のバランスを見て分割することが大切だということです。
失敗3:子どもへの住宅資金を出し渋った
子どもが家を建てるときがチャンス
子どもが住宅を建てる際に資金援助をすると、「住宅取得資金の贈与特例」を使うことができます。この特例では、最大1,000万円までの資金を税金なしで渡すことが可能です(条件により金額は異なります)。
また、不動産を相続する場合、評価額が実際の価格よりも低くなることが多いため、結果として相続税が安くなる傾向があります。
例えば、1億円の家を購入したとしても、建物の評価は固定資産税評価額(建築費の7割程度)で見積もられ、土地も「路線価」などによって評価されます。実際には購入額の7〜8割の評価になるケースが多いです。
つまり、現金で相続するよりも不動産に変えて渡すことで、税金を抑えることができるのです。
失敗4:二世帯住宅を区分登記してしまった
区分登記と共有登記の違いとは?
「区分登記」は建物の1階と2階を別々の住宅として、それぞれ個別に登記する方法です。一方、「共有登記」は1つの建物を2人以上で共同所有する登記方法です。
なぜ共有登記が有利?
相続税には「小規模宅地等の特例」という制度があり、居住用の土地の評価額を最大80%減額できます。ただし、この特例を受けるには、相続人が被相続人(亡くなった人)の家に住んでいたことや、相続後も住み続けることが条件になります。
区分登記してしまうと、子ども側は“すでに自分の家を持っている”とみなされ、この特例が使えなくなる可能性が高くなります。逆に共有登記であれば、建物全体を「一つの家」として見なすことができるため、特例を受けやすくなります。
したがって、二世帯住宅を建てる場合は、区分登記ではなく共有登記を検討することが大切です。
失敗5:相続した不動産をすぐ売ってしまった
売らなくても納税資金を確保する方法がある
相続した不動産を売って、相続税を払うというのはよくある流れです。しかし、不動産が将来的に資産価値を生むような物件(収益物件)であれば、無理に売らずに“資産管理会社”を活用する方法があります。
資産管理会社を使った納税スキームとは?
資産管理会社とは、自分で設立した法人です。
- この会社を設立し、銀行から融資(ローン)を受ける。
- 会社が、あなたから相続した不動産を購入する。
- 売却代金があなたの元に入り、そのお金で相続税を納める。
この仕組みを使えば、不動産を手放さずにキャッシュを確保できます。 ただし、この方法を使うには、その不動産が「安定した家賃収入を生む物件」であることが前提であり、銀行の審査にも通る必要があります。
また、不動産を売却する際には「譲渡所得税」「不動産取得税」「登録免許税」などの費用も発生するため、事前に専門家と相談することが重要です。
失敗6:1つの土地を兄弟で仲良く分けた
仲良く分けたのに損してしまった
兄弟で「平等にしよう」と土地をキレイに2つに分けたところ、それぞれの土地が狭くなり、家やアパートを建てるには中途半端な広さになってしまった…というケースがあります。
土地の分け方次第で価値が大きく変わる
たとえば、1つの大きな土地として残しておけば3階建てのアパートが建てられたのに、半分ずつにしたことで駐車場にしか使えなくなった、ということもあります。
さらに、土地を分筆(物理的に分ける)すると登記費用がかかったり、評価額はそのままであるため、節税効果もありません。将来の活用方法や不動産価値まで考えたうえで分け方を検討することが大切です。
失敗7:元気なうちに遺言書を作らなかった
遺言書は“トラブル防止の保険”
「ウチは仲がいいから大丈夫」と思っていても、相続はお金の話。あとで揉めるケースは本当に多いです。
特に、兄弟や甥・姪が相続人になるケースでは、全員の合意が必要になるため、名義変更や手続きが非常に大変です。
1通の遺言書が家族を守る
「自分に何かあったら、この財産は○○に渡す」という遺言書があるだけで、名義変更や財産分割がスムーズに進みます。
専門家に相談すれば、自筆でもしっかり法的効力のある遺言書を作ることができますので、元気なうちに準備しておくことが安心につながります。
最後に:相続対策は“元気なうちに”
相続対策は「亡くなってから考える」ものではありません。今、元気なうちに行動しておくことで、家族の負担を減らし、大切な資産をしっかり守ることができます。
💡「まだ早いかな?」と思っているうちに、できる対策はどんどん減っていきます。
気になった方は、まずはお気軽に専門家へご相談ください。